名もなきトリマーの名古屋ペットサロンBLOG

犬に優しい小さなトリミングサロンをつくるまでの徒然

ペットと美容師のハサミは何が違うの?トリミングシザーの選び方

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犬のトリミングに使う鋏と、人間の美容・理容に使う鋏。

「違いを教えてください。」「何が違うんですか?」「人間用をペット用に使ってもいいんですか?」「人間用を犬に使ったらすぐ切れなくなりますか?」「犬の細い毛だと人間用では無理なのでは?」

という質問をよく聞きます。

人間用とペット用の鋏の違い...

それは、特にありません!

ただ基本的にハサミは同じですが、研ぎ方や調整をペットの毛にしなければ切れないことがあります。

人間の理容で刈り上げに使う鋏がペット用として使われています。

東京理器、東光舎、内海、中野製作所、ワンクス、日理などがペット用のシザーブランドを立ち上げています。

時々、人間用のシザーを犬に使うとすぐに切れなくなるというコメントを見たりしますが、それはないです。美容師よりトリマーの方が鋏の開閉数が多いので消耗は早いと思います。そもそも、どこからが人間用でペット用なのかという区別も難しいので。

むしろ人間用のシザーとして作られたモノの方が値段が高いだけあって、作りがしっかりしたものが多いと思います。

ペット専用ブランドの鋏はどういうもの?

美容師はウェットカット、ドライカット、スライドカット、ストロークカット、チョップカットなど様々なカット技法があるため、シザーの種類も豊富です。

トリマーが主に使うのは刈り上げに使うようなシザー。

トリマーは毛が逃げなくてとにかく切れるものを望みますが、美容で使う場合はそうとは限りません。

美容師の鋏もトリマーで使えるけど、ペットに使えるものを美容シザーの中から探すのが難しいという理由からペット用として分けているのがペットブランド鋏です。

例えば美容鋏メーカーのミズタニシザーズさんのシザー選び方”シザーズマップ”というWEBページがありますが、これを見ると美容用のシザーがどういう形で区分されているかが分かりやすいです。

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この中からペット用に使うものを自分で選ぶのは難しいですよね。学校でも鋏の種類についてはそこまで詳しく教わらないのでは。

ペット用は毛が逃げない鋏がメイン

刃がついているラインの事を「刃線」と言いますが、刃線には直刃、柳刃、笹刃の3つがあります。

  • 直刃…刃元から刃先までほぼ直線。
  • 柳刃…刃元から刃先まで緩やかなカーブ。
  • 笹刃…刃線が大きくカーブしていて毛が逃げやすい。

ペットブランドは直刃が中心です。美容用は柳刃、笹刃が中心。理容師は直刃も使うかもしれません。

トリマー視点だと、毛が逃げる鋏なんて使い物にならないと思いますが、毛が逃げないという事は引っかかりやすいということ。犬は毛が引っかかろうが何も言いませんが、人間の場合は少しでも引っかかる感じは嫌ですよね。なので切られている感じを無くすために、毛を逃しながら切る設計になっています。

そういった事でも人間用と犬用では差が出てきます。

切った感触としては、「直刃はザクザクと切っている感じ」が伝わってきます(硬い切れ味ともいいます)。「柳刃は切っている感触は少なくサクサク切れる感じ」(柔らかい切れ味ともいいます)。「笹刃はスルスルーという感じ」

ペット用はとにかく毛が逃げないという事が重視されるので、ほとんどの鋏が直刃になっています。

その辺りの違いがトリマーの鋏選びの難しさになります。人間用から選ぶ場合はこの違いを覚えておかないといけません。

ただ切れ味は研ぎ方で変えられるので、刈り上げ向けの人間シザーならほとんどの鋏がペット用に使えるはずです。

保管している鋏を取り出して確認してみました

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文字が消えかかっていますが、ペットブランド大手の東京理器、胡蝶の彩SPECIAL。刃線を見るとほぼ直線です。刃先は太いです。

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美容シザーで有名なジョーウェルを展開している東光舎のペットブランド、ドッグウェルのDKM。こちらも刃線はほぼ直線。刃先は細いです。

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今、メインシザーとして使っているミズタニのDB20。ミズタニは人間用のシザーです。刃元が少し太めで、ほとんど直刃ですが若干カーブしているのが分かると思います。東京理器やドッグウェルと比べると柔らかい切れ味ですが、人間用シザーの中では硬い切れ味ですね。

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人間用シザー、ヒカリのレイコスモス。刃線を見ると太い刃元から細い刃先まで緩やかに斜めにカーブしてますよね。カーブしているため毛が逃げるのでミズタニよりも柔らかい切れ味です。

4つとも用途としては刈り上げ用ですがメーカーでこのように違ってくるんです。

研ぎと刃角度

刃線について説明しましたが、次は刃角度について。

”刃角度”は名前の通り刃を研ぐ時の角度です。刃角度の角度が鋭いハサミは切れ味は良く、毛が逃げない傾向があります。逆に鈍角なシザーは毛が逃げるが、引っかかりが少なくなります。

  • 刃を【鋭角】(鋭い角度)にすると切れ味が良くなり、毛が逃げなくなる傾向になる。
  • 刃を【鈍角】(鋭くない角度)にすると毛は逃げるが、引っかかりが少なくなる。

研ぎ方一つで、鋏も変わります。

研ぎ方のことを「刃の付け方」とも言いますが、研ぐ人によって切れ方が違ってくるんです。

ペット用の鋏を研いでもらう時の伝え方

「出来るだけ鋭く、毛が逃げない刃付けでお願いします」と伝えましょう!それでも毛が逃げて切れないなら刃線を直線刃に調整にするという方法もあります。

刃線や刃角度はメーカー、鋏の鋼材でも差があるので「刈り上げ用の鋏」といってもメーカーで切った時の感触が全然違うんです。

トリマーの鋏選びについて

最初はペットブランドから選んだ方が失敗がありません。

  • カドック
  • 中野製作所/菊王冠、BOB
  • 東京理器/胡蝶、アルコバ、白鳥、PIONEER、TOHRI
  • D.Iウィン
  • 東光舎/ドッグウェル
  • ワンクス/ケリー
  • 内海
  • ケイプロペット
  • 日理/ブルドック、ウサギ、プードル
  • 無印/アーバンスタイルシザー

有名なペットブランドシザーなら、鋏の作りも刃付けも犬の毛に適したモノが売られているので、間違いはありません、最初は2万円~3万円程度の安いもので良いと思います。

鋏のことが分かってきて少し良いものが欲しくなったら内海、ケリーなどの5万円前後のシザーを試してみると良いかと。納得行くものが見つからなければ人間用ブランドやオーダーシザーから検討してみてください。

人間用ブランドから選ぶ場合

ナルト、ハヤシ、光、柳生、オオカワ、シザーズ・ジャパン、ロイヤルマスターシザーズ、ミズタニシザーズ...

美容鋏ブランドは沢山あり、値段もペットシザーと比べると高くなり10万円の鋏でも普通の世界です。

人間用ブランドから選ぶ時は「刈り上げ用orブラント,硬い切れ味のもの」がペット用でも使いやすいです。サイズはメインとして使う鋏は7インチ前後。理想のサイズがなければメーカーにサイズアップのカスタマイズの相談をしてみてください。

手作りのメーカーであれば、こちらの希望を聞いて細かい調整もしてくれますよ。

選ぶのは大変ですが、種類も豊富なのでなかなか楽しいと思いますよ。個人的には人間用の鋏の方が作りもしっかりしていて、長切れすると思います。まあ、値段が違いますからね。

お店のブログの方で鋏の鋼材についても書いたので、マニアックな部分ですが興味のある方は参考にどうぞ!

isola-salon.com

ペットブランドは女性の手に合っている

ペットブランドの鋏は指穴が小さかったり、小さい手でも開閉しやすかったりと、女性の手に合わせたものが中心のような気がします。男性トリマーは人間用の鋏を持ってみると持ちやすいものが多くてビックリすると思います。

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先程紹介した4つの鋏のハンドル部分です。

右側2本がペット用の胡蝶、ドッグウェルですが指穴が小さいですよね。ハサミの持ちやすさはこのハンドル部分で決まります。重さの違いもありますが、やっぱりハンドルが重要です。

鋏はテコの原理を使っているので、ハンドルが長いほど、重いほどパワーがあります。サイズは短い方が刃先までしっかりと力が伝わり、バランスも崩れにくいため短いほど切れ味はよくなります。

セニング、カーブはペットブランドがおすすめ

トリマーが使うスキバサミは6インチで40目・42目ですが、人間に使うと引っかかりやすく美容用では数が少ないです。またセニングは鋭い作りになっていないものが多いので、犬に使うと全然切れないという場合があります。

仕上げシザー以上にセニング選びは難しいです。

カーブシザーに関しては人間用のものはまず犬には合いません。人間用のカーブは逃げる刃付けで笹刃は中心なので、トリマーが使うカーブとは用途が違います。ブラント用のカーブシザーとして売られていれば犬にも使えるかもしれません。

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梳きバサミは作りがしっかりしているブランドだと内海、ケリーが良い気がします。僕は神田文一商店のOKセニング50目を使っています。今は製造していない古いブランドなので今から手に入れるには中古しかありません。ヤフオクだと1万5千円程度で落札出来ますが、研磨+調整が必須になるかと。

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ヤフオクは研磨、調整が必要になる場合が多いですが格安で良いハサミが手に入るのでおすすめです。

最近はケリーや東京理器などペットブランドからも50目でカット率が高い鋏が出ています。こういう細かい目のセニングは毛が引っかかりやすいので人間用ではあまり使われないですね。

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これはカット率80%ぐらいのブレンディングシザー。人間だと刈り上げ用、ぼかし用のセニングといったところでしょうか。

刃の溝の数によって5スキ、3スキ、2スキと分類されますが、これは溝がないフラットのブレンディングシザー。「櫛の数、溝の数、カット率、重さ」で使い心地が全然違うので、好みが出ると思います。

ブレンディングシザー選びは一番難しいですね。ペット用のブレンディングシザーは作る側も難しいと聞くので、どこのメーカーも価格が高いです。

まとめ

基本的に美容師の鋏もトリマーの鋏も違いはありません。美容師の鋏は種類が多く、トリマーに適したものを探すのが難しいためペットブランドがあります。最後にペット用鋏を選ぶ時のポイントを簡単にまとめておきます。

トリミング鋏を選ぶ時のポイント

  1. 刃線は直刃に近いものを選ぶ(ペットブランドなら直刃になっている)
  2. メーカーによって切れ味が全然違う
  3. ハンドルの形、指穴のサイズで持ちやすさが変わる
  4. 毛が逃げなくて硬い切れ味がペット用におすすめ
  5. セニング、カーブはペットブランドから選ぶ
  6. 必ず鋏を握って試し切りをすること

お店の方針で、プードルをセニングで仕上げる必要がある場合は6.5~7インチで50目前後のカット率50%以上の梳きバサミがあると効率がよくなると思います。

またブレンディングシザーを選ぶ場合は、メーカーによって「鋏の溝の形、サイズ、重さ」に差があるのでさらに選ぶのが難しくなります。

鋏の質は値段に比例する部分がありますが、5万円程度のものならペット用としては充分良い鋏です。2万円の鋏と比べると全然違います。10万円以上のものは確かによく切れますが、トリマーの鋏としては趣味の世界になってくると思います。

学生時代の鋏や2万円の鋏よりも良いものを探している方は、ペットブランドなら内海、ケリー。美容ブランドならミズタニ、ヒカリを試してみると良いと思います

ネットで無料貸出している代理店も多いので、実際に切って試してみてください。

では!

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